先日、新潟県が主催する「地域づくり見本市」中越会場に参加しました。テーマは「大学生・外部人材受入による地域づくり」ということで、大学生の受け入れをした地域からの事例発表と、意見交換会が行われました。
その中で、活動を続けていくうちに
- 「受け入れ地域の負担感が増していく」
- 「地域住民が次第に活動疲れていく」
- 「やってみたことが本当に地域がやりたかったことかわからない」
といった声が多数ありました。
地域活性化や地域おこしと聞くと、どちらかというと「みんなで新しいことを始めましょう!」と、テンションを上げて活動することが多いですよね。地域の未来のためにと言って、ちょっと無理をしがち。始めるときは、勢いがあってよいのですが、いずれその反動が返ってくるといったところでしょうか。
せっかく始めた活動が、地域の重荷になってはいけません。
そこで、長続きする地域活性化・地域おこしについて考えるため活動を4つのタイプに分類しました。
第一の視点(横軸)は活動が「地域の外の人向け」か、「地域内の人向け」かという視点です。
地域活性化・地域おこし活動については、得てして「外向け」の活動をしがちです。すると、その活動で最初に恩恵を受けるのは地域外の人となります。もちろん、回り回って地域のプラスになるとは思うのですが、一方で「地域がお客様をおもてなしする」という構図が続きがちで活動疲れにつながりやすいという注意点があります。
第二の視点(縦軸)は活動を「新しく作る」か、「既存のものを見直す」かという視点です。
こちらも、得てして「新規」の活動をしがちです。せっかく活動をするならば、また活性化が必要なのだから、新たに何かを始めなくては行けないと思うのは当然ですね。何か新しいことをしようというのは「楽しい!」ですし。しかし、そもそも人が減り、活力が弱まっている中で新たな取組を始めるのは、当然負担になりやすいとも言えます。
私は新規「楽しい」の対立に既存「楽になる」というキーワードを置きました。これは、「既に行っている活動が楽になるように改善すること」も大切な地域活性化の活動だと思うからです。
実は一番注意が必要な「地域外向け✕新規」
Aの領域である「地域外向け✕新規」は、地域活性化・地域おこしに取り組むにあたって、最も着手されがちな活動です。「地域を残すためには、交流人口、関係人口を増やして、移住者を増やすんだ!」という課題設定をすると、自ずとAの活動のアイデアが浮かびかがります。
具体的には、新しいお祭りイベントや、都会の方を呼んでの交流イベント、農業体験や伝統産業体験、プロモーションビデオを作ったり、WEBサイト・SNSで地域外へ地域の魅力をPRしたり…
しかし、実はこの領域は最も手間暇がかかり、かつ地域住民へのプラス効果は遠回りとなります。というのもAの領域では外の人に「楽しい」と思ってもらうことが第一で、そこに住む地域住民が楽しいかどうかは2の次になるからです。そのため、「地域住民が疲れてしまった」という活動をよく見るとその多くがAに当てはまります。
実は、Aの領域がうまく回るには、経済性=儲かるかどうか?が条件になってきます。例えば、もともと観光業が基幹産業の地域であれば、外から人が来てもらえばもらっただけ宿や飲食店の売上が上がります。しかし、宿も飲食店もない地域で交流イベントをして沢山の人が来てくれたとしても、地域の売上につながる要素がないと、イベントの手間だけがかかり続けることになってしまいます。
もちろん、一時的には「外の人とのふれあいが地域住民に元気をもたらしてくれた」というプラスの面はあると思いますが、それが何年も続くと元気をもらうよりおもてなしに疲れてしまうケースが多いのです。長続きするためには、それでちゃんと稼げて、地元経済が潤うかどうか?という視点が欠かせません。
見逃しがちな「地域内向け✕新規」
同じく新規でもBの領域、つまり「地域内向け✕新規」はそこに住む住民の楽しみのためにはじめる新たな活動です。本来の地域活動と言えば、その土地で生活する人たちの利便性のために道を整備したり、娯楽を用意したり、生活改善をしたりするものです。しかし、地域おこし・地域活性化というと「地域の外に向けて」と視点が変わってしまいがち。
地域の内向けとなれば、実は活動にかかるお金も最小限で良くなったり、利益が直接自分たちに向くぶん活動の手応えも感じやすいと言えます。外部人材を受け入れるにしても、地域内のメリットになることに協力してもらえるのであれば、「受け入れ疲れ」にもなり難いはずです。外向けの観光的な活動ではなく、見逃されがちな内向けの生活改善的な活動のほうがプラスに働く地域も多いはずです。
例えば外から人を受け入れる農業体験イベントをするにしても、おもてなしの農業体験なのか、それとも農家が本当に助かる援農ボランティアを受け入れるイベントなのかで、Aの要素が強くなるか、Bの要素が強くなるかは大きく変わってきます。
「楽にする」のも立派な活性化
そして、「活性化」という文脈ではあまり目の行かないのが「楽にする」という視点です。
人はどうしても新しいことを始めることにはワクワクしたイメージを持ちますが、何かを辞めたり見直したりすることに対してはネガティブな感情を抱きがちです。しかし、そもそも地域活性化・地域おこしをしようという地域は基本的には「昔より弱っている」わけです。それは人口も、産業も、若さも、活力も…です。そして、今より元気だった頃にはじめた取り組みが多数残っているのが一般的です。そして、近年の地域おこしブームに乗って新たに始めた活動も多数あったりと…。
そうして「活動疲れ」が蔓延し始めているようなケースは特に、まずは活動の整理整頓・リストラに着手するのが懸命です。外向き、内向きに限らず、「今の自分たちで無理なく実施可能な範囲はどれくらいか」を話し合い、辞めるものはやめる。減らすものは減らす。効率化・省力化する方法はないか探しましょう。根本的にはその地域での生活が快適かどうかが最も大切であって、活性化活動が生活のゆとりを奪ったり、ストレスになるのであれば本末転倒になりますよ。
何よりも大事なのは「担い手がいる」活動かどうか
最後に、どんな活動をするにしても重要なのが、地域内にその活動の担い手が具体的にいるか否かです。言い換えれば、活動を通じて『得する人』が明確かどうか?です。
例えば、地域で新たにレストランを立ち上げる場合、レストランの収入で生活していこうという人がいるかどうかが大切です。イベントの場合も、そのイベントをすることで稼げる人がいるかどうか。特に対外的な活動(A・C領域)をする場合には、そういった活動を担う主体となる人が、具体的か否かで、活動の成否が大きく変わってきます。
仮に地域に本当に必要なことであっても、最終的に「それ誰がやりたいの?」「それ誰が責任を持つの?」という疑問に「私です!」もしくは、「◯◯さんです」とパッと言えなければ活動は長続きしないどころか、いつのまにか地域の負担になっていきます。
「やったほうがいいこと」を思いつく人はたくさんいますが、「どうしても自分がやりたいこと」を持っている人は少ないです。そういった情熱を持った人が活動の中核にいるか否かが、活性化プロジェクトには不可欠だと思います。もし、居ないのであれば、徹底的に「楽する」ための手法をみんなで話し合うことがおすすめです。