時を超えて受け継がれるものに関わる喜び

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今、自分のしている仕事が、一体何年先まで残ることなのか…。

そんなことを思うことが増えました。

現代の大量生産大量消費社会の中では、自分の作ったモノやサービスがあっという間に消費され、数年後にはまったく価値のないモノになっていることが当たり前になっています。

例えば、ライターの私が頑張って書いた文章の中で、来年読んでも価値のある文章はどれくらいでしょうか?数年後は?十年後は…?

そんな「リアルタイム」の圧力が強まっている今の社会で、時間を超えて受け継がれる何かに関わることが私たちの心のザワつきを落ち着かせてくれるひとつの方法のように思います。

3/30(土)に茅葺屋根の材料である「かや」を集める「かや刈り」を行います。

新潟市西蒲区福井集落にある茅葺屋根の古民家・旧庄屋佐藤家は、江戸時代後期に建てられたと言われる、築250年を超える茅葺きの古民家です。

約20年前、佐藤家を取り壊すという話が出た際に、「この村に残された唯一の茅葺屋根の古民家がなくなることで、ここの暮らしも消えてしまう」と危機感を覚えた住民有志が立ち上がり、保存活動をスタート。地域文化を守る象徴として建物を残そうと努力してきました。

私が佐藤家に通うようになったのは5年ほど前のこと。行政に頼ることなく、市民の力で茅葺きの古民家を維持してきた地域の人たちがとても格好良く見え、以来微力ながらお手伝いをしてきました。

茅葺屋根の寿命は20年ほどと言われ、定期的に補修や、葺き替えが必要です。

屋根を葺くには、大量の「かや」が必要で、修繕や葺き替えのときに刈って集めるのではとても足りません。

そのため、茅葺屋根に住んでいた時代は、毎年「かや」を刈って、少しずつ屋根裏にためていました。その次代はみんな茅葺きに住んでいたので、それぞれの家が、それぞれに「かや」を毎年少しずつ蓄えていました。そして、誰かの家の屋根が葺き替えのタイミングになると、村の人たちが自分でためた「かや」を一束持ち寄り、みんなで葺き替えたんだそうです。葺き替えには大勢の人が必要なので、各家の屋根を順番にみんなで葺き替えていました。金持ちの家の屋根を葺き替えるときも、貧乏人の家のときも、みんな一束ずつ「かや」を持ち寄り、そして「労働力」を差し出して、対等な関係の中で暮らしをつくっていたのです。

これが、伝統的な村の相互扶助機能の「結」と呼ばれる関係性です。

村から茅葺屋根が段々に消え、農業は機械化が進み、賃労働者が増えていくうちに、こうした共同作業も姿を消してきました。そうして残った茅葺きの古民家のうち、文化財に指定されるような立派なものの多くは、建物は保存されているものの、その家のためにかやを刈る地域の人はもういません。聞いた話では、日本のかやを使うどころか、モンゴルなどから輸入したかやを使い、業者が葺き替えているのだとか…。

しかし、この佐藤家には、この家のためにまだ「かや」を刈る人たちがいるのです!茅葺屋根の「形」だけが残っているのではなく、茅葺屋根を維持する人々の関係性が残っているのです。

仕事としてでもなく、自分の暮らしのためでもない。何とかこの建物を残し続けたいという想いがある人が、率先して汗をかいて、この村に残された最後の茅葺きを守っている。この人たちを見て、私は本当に格好いいなぁと思います。

毎年、現場で汗をながす無名の沢山の人達が、この佐藤家を守り継いできました。そうして受け継がれてきた古民家を、未来に受け継ぐために、私も名もなき民の一員となりたいと思っています。SNSで自分が有名になるのでも、一流ビジネスパーソンになるのでもなく、「個人」を超えてつながる営みの一員になること。それは、汗と疲労感にまみれ、面倒くさいし、時間もかかるし、汚れて匂い立つけれど、何とも言えない生々しい手触りがあり、「生きていること」を五感で感じられる喜びがあります。

自己実現の世界とは対極と感じられる、共同体への貢献にご興味がある方、ぜひ一緒に時代を超えて受け継がれるものを支える無名の民になりませんか?

ということで、めっちゃお手伝い募集していますよ!というお話でした。

https://makidoki.localinfo.jp/posts/5942732

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