2020年を振り返って

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恒例となった振り返りエントリーを書く。

なんと、個人ブログには2019年の振り返り記事以来何もアップしていなかったようで、驚いている。2020年はFacebookやTwitterでは割と長めの文章で投稿していたので、ブログに転載すればよかった。

さて、2020年は3月に長男3歳に、次男が1歳になったこともあり、4月から2人共保育園に通って妻が職場に復帰した。家庭環境が変わったことで、私生活にも、活動にも、仕事にも大きな影響が出ると考えていた。しかし…

COVID-19の出現によって、世の中全体の動きが大きく変わってしまった。そして、私自身、これまで積み上げてきた方法論を、このウイルスによって真っ向から否定された気分になり、年末の今もまだ混乱の中にいる。

基本的に私の活動フィールドである地域づくりや、農による共同体づくりは、『人のつながりの回路を新しくつなぎ直すことで、問題を解決する』という方法論に支えられてきた。インターネットやSNSが普及して誰もが情報を受発信できるようになったことで、これまでつながることがなかった人同士の出会いや、つながりが生まれやすくなった。小さな主体、つまり個人や地域やイベント、小規模事業者がマスメディアや紙媒体に頼らず気軽に人を集められるようになった。この環境を使って、これまで出会わなかった人間やつながりの回路を新たにつくる。そして、そして『密』をつくることで、損得感情や合理性を超えた人間関係を新たに結び直す、という方法だ。

例えば中山間地域では都会の学生や消費者とのつながりの回路をつくったり、例えば障害者福祉の中ではアートを使ってこれまでつながりのなかった外部とのつながりを生み出したりしている。

しかし、COVID-19によって、人と人とのつながりや、外部と交流することが、危険なこと、リスクがあることだと多くの人が認識する社会になってしまった。自分がやろうとしていたことがウイルスに阻まれてしまった。この先どうなるかは分からないが、この状況が続くと思うと大変憂鬱な気分なのだ。

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本業である取材・ライティングの仕事や、地域活動支援の仕事、自分の地域活動はCOVID-19の影響でさまざまな変化があった。一番の変化と言えるのは『イベント』がなくなったことだろうか。

一方で、変わらない営みもある。2014年から参加しているまきどき村の畑しごとと、2018年から始めた田んぼしごとだ。野菜や稲を育てる行為はウイルスとは関係なくあり続けた。違うのは、それを不特定多数の外部の人を集めながらやるのか、見知った仲間とやるかのという点だ。今年は図らずも後者となった。そして、たまたま今年はまきどき村に高頻度で継続的に関わってくれる新メンバーが加わってくれたことで、大変充実した活動ができたと思う。今年は、田んぼを1.6反から約2倍の3反(約3,000平方メートル)に増やした。たくさん人を集められない中でも、仲間とともに大きなトラブルなく、約17俵(1,020kg)のお米を自給することができた。これまでは、『浅くとも関わりを持ってくれる人を広く集める』ことが大切だと思っていたけれど、今年の経験から『深く関わりを持ってくれる特定の人との人間関係を深く結ぶこと』の方が、私生活はハッピーになるのではないかと思えたのは発見だった。もしかしたらCOVID-19の賜物なのかもしれない。

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2020年も、勉強・インプットはゲンロンの書籍や動画コンテンツを中心にしていた。ゲンロン友の会に入会したのが2013年(確か)だったので、思想的なことを読み始めて8年ほど経つが、ようやく少しずつ少しずつ思想や社会学の全体像というか文脈が見えてきたような気がする。ゲンロンと並行して、農的な本(宮本常一や内山節や、農文協の書籍)は読んでいた。それに加えてゲンロン周辺の社会学系の書籍も読むようになった。その中で、2020年に個人的に数年来の関心事を論理的に整理してくれていると関心を持ったのがユルゲン・ハーバーマスの『システムと生活世界』の二元論だった。所謂「亜インテリ」の最下層にいる私は、ゲンロンのコンテンツで宮台真司氏を知り、そこから彼の「システムと生活世界」の話に興味を抱いて、宮台がそういう事を言っている、考えているのだと思い込んでいた。しかし、何がきっかけだかは忘れたが、『システムと生活世界』の元ネタはドイツの哲学者のハーバーマスだったと知った。それから、東京大学名誉教授の花田達朗氏の『公共圏という名の社会空間―公共圏、メディア、市民社会』を買ってみたり、ネットで読める論文を読んでみたりしている。まだ、自分の中で消化しきれていないが、地域活動支援の仕事にも、まきどき村の活動にも、ライターの仕事にも必ず理論的に実装できると思っている。2021年はもう少しアウトプットに努めたい。

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私生活、地域活動の田んぼや畑のことばかり発信しているせいで、「ライターやめたの?」と聞かれることが何度かあったが、地味に続けている。2012年から個人で仕事をはじめてもう9年だが、「何の専門なの?」という問いには相変わらず答えられないが、それでもそれなりに売上が立ってきているのは意外とすごいことだと自分では思いたい。COVID-19でなくなった仕事もある中で、何気に過去最高益だったことを地味に書いておく。ただ、私個人の力ではなく、ガッツリ協力してくれている長谷川円香さんのおかげで仕事を請けられているので感謝しかない。ただ、もう少し仕事のことを発信しないとだし、その年の売上はやってみてのお楽しみ!その年暮らしの請負業ではなかなか見通しも立たないので、来年あたりは改めて今後の方針を考えないといけないかもしれない。編集プロダクション的な仕事に専念してしまえば良いのだろうが、地域活動支援や社会活動、農的なものを捨てられない(というかそちらに叶わぬ恋をしている…)のが私の残念な点だろうなぁ。。

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子供が3歳と1歳になり、自己主張も激しくなり大変手がかかる。妻が仕事を再開したこともあり、子どもを親の都合で動かしてしまっているなと思うことが増えた。また、家庭のことに関して妻と言い合いをすることも増えた。仕事に当てられる時間が明確に減った中で、家事や家族との折り合いの付け方に苦労した。これからも苦労すると思うが、みんなそうなんだろうから頑張ろう。子どもや妻に常に学ばせてもらっているという視点を忘れずに。

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このエントリーの締め方がわからなくなってしまったが、例年そうなのだから仕方がない。

それにしても、あっと言う間に35歳になってしまった。今後はもっと早く時間が進むんだと思う。その中で自分ができることなんてたかが知れているし、本当に少しだと思う。今年は、雑誌『料理通信』2021年1月号(2020年12月4日発行)の新クリエイション魂というコーナーに取り上げていただいた。自分がこれまでやってきたことを第三者が書くとこうまとめられるのかと大変感心した原稿だった。別にたいしたことをしている人間ではないが、何かを毎年少しずつ積み重ねていれば振り返ったときにそれなりに見えるのかもしれない。地道にコツコツと目の前の生活を大切にしていきたいと思う。みなさん今後ともよろしくお願いいたします。

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