どこか住んでいる土地とは別の土地に遊びに行った時、「なんて素晴らしいところなのだろう」と感動することが多くある。むしろつまらないことしかなかった土地の方が珍しく、大体はどこでも物珍しく興味を惹かれるところがある。
地方に住んでいると、地方の魅力を語る人はたくさんいる。それは間違っていないし、土地の魅力というのはあるのだろう。しかし、「この土地が最高だ」、「日本一だ」という主張には賛同しかねる。
「この地域だけが特別!」というPRを見ると、薄っぺらく感じてしまう。
世界中には数えきれないほどの人が住む土地がある。そして、その土地はそれぞれに歴史があって、文化があって。それは絶対に優劣をつけられない。
どこが一番なんてことはないのだ。
私は、大学入学以来ずっと新潟県新潟市に住んでいる。もう10年になる。
「新潟が大好きなんだね?」と聞かれると、「嫌いじゃないけど別に一番じゃないよ」と言いたくなってしまう。
私が新潟に住んでいるのは、ほとんど偶然で、たまたまセンター試験の結果が新潟大学しかA判定が出なかったので受験し入学してきた。就職の時には、たまたま彼女が新潟にいて、たまたま興味ある企業に新潟で採用してもらったから。フリーになる時も、やっぱり彼女が新潟にいて、仕事をくれる人も新潟にいたから。
それで、たまたま新潟に住んでいるから、せっかく住んでいる場所をもっと楽しくしたいと思い、いろいろな仕事や活動をしている。そこには「新潟だから」というのはあまりなく、今住んでいるからという理由しかない。
新潟で縁があったから、住んでいる場所を楽しくして、自分が楽しみたいから地域活動もしている。
私は土地にこだわりはあんまりなくて、どこだって住めば都だと思っている。真剣に比較検討すれば新潟ほど冬が厳しくない広島とか住んでみたいなぁとかも考える。
じゃあなんで広島に行かないか?と考えてみる。なんでだろうか。第一に知り合いが居ない。仕事もない。特に移住せざるをえない理由もない。新潟でつくったつながりや仕事等を捨てることになる。そんなところだろうか。
このように、どこに住むかってあんまり大事ではなくて、それよりも誰と住むか、誰がいるかの方が大切な気がする。それをコミュニティと言ってもいい。土地の魅力で新潟に残るのではなくつながりが多いから残る。そんなイメージだ。
場所に差別化要因はなく、誰とつながっているかが大切。
そうなると、地方で移住者を集めたりしている人たちは、土地の魅力以外の魅力を語らなければいけないなぁと思う。
さらに言うと、これって結構仕事とも似ている。私は今はライター業を中心に食べているけれど、何でお金を稼ぐのか手段は正直どうでも良い部分もある。それよりも、誰とやるか、のほうがモチベーションが続いたりする。自分が発注者になる時も、相手のスキルより、この人に任せてみたいかと思うかどうかのほうが気になったりする。
夢や自分のやりたいことをやる、という選択肢もいいしスキルも大事だけれど、私は一緒にやりたい人とだったら業務内容や現在のスキルは何だっていいかな、とも思う。
人生なんて全部たまたま。たまたま出会った人や、たまたま頼まれた仕事、それを縁とよぶ。たまたまにしっかり応えて、つながりを積み重ねていこう。
唐澤頼充