髪の毛の哲学

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先日、久しぶりにもじゃもじゃパーマをかけ友人に「誰?」と笑われている。私は人と比べ髪の毛が伸びるスピードが速い。せっかく髪の毛を切ってかっこいい髪型にしてもらっても、あっという間にもさっとした残念な髪形になってしまう。

2週間に一度くらい散髪ができたらどれだけイケメンでいられるだろうかと思うと興奮が止まらない。それか、いっその事スキンヘッドにしてしまい、オシャレな髪型のカツラをかぶって過ごしたほうがカッコいいのではないか?とも考えている。

とにかく、髪の毛が伸びるのが面倒くさい。腋毛も○ン毛も、毛は生えているものの一定の長さになれば抜け落ち、一定の長さは保たれる。なぜ髪の毛は相当な長さまで伸び続け、頻繁に散髪をしなくてはいけないのだ。正直なところイライラする。
今の時代では髪型は重要なファッションの要素だ。誰もが疑いなく自分に似合う髪形を探したり、髪型で個性を主張したりする。さまざまな髪の長さや、色。そんなものが当たり前の世界になっている。しかし、昔を振り返ると結構みんな同じ髪型をしている。日本のチョンマゲはもちろん、その前の飛鳥時代の絵もそう。ヨーロッパとかもだいたい一緒だ。
昔は時にファッションのためのものではなかった髪の毛。一体、髪の毛はなぜ伸びるのだろうか?
動物の中である特定部位の体毛が伸び続ける動物がいるか考えてみてして欲しい。人間に近いといわれるチンパンジーやサルも、髪の毛が伸び続けるという印象はない。どいつもこいつも大体同じ髪型をしている。そもそも動物の体毛は同じ種であればだいたい同じような髪型をしている。なぜ人間だけが髪の毛が伸びるのか。
そもそも髪の毛が伸びることで、自然界でいいことなどない。視界が遮られてしまうし、何かに引っかかったり挟まったりすると痛い。狩猟生活をしていた頃のホモ・サピエンスにとっては致命的な弱点になりかねない。森の中で枝に髪の毛が絡まり動けなくなり獲物を逃す可能性がある。髪の毛が目に入り「痛ててっ」と言っているその瞬間にマンモスの強烈な一撃をもらい死に至る可能性もある。しかも髪の毛は切りにくいときている。自分の髪の毛をさわってみてほしい。思った以上に頑丈だ。工作用のハサミではうまく切れないほどだ。刃物がなかった時代などは、相当切りにくかったことが容易に想像できる。こう考えると髪の毛が伸びるのは進化を間違ったとしか思えないのだ。
機能性を考えれば人間の髪の毛もある程度の長さで生え変わったほうが絶対にいい。しかし髪の毛は伸びる。伸び続ける。これはもう髪の毛が伸びる生物が人間だと言ってもいいかもしれないくらいではないか。「人間とは何か?」「人間と動物の違いは?」という問いの1つに「髪の毛が伸びる生き物が人間だ」と回答があってもいい。脳の大きさや、二足歩行、手の進化が人間を作ってきたという話は聞いたことがあるが、これまでに髪の毛が人間を作ったという話を聞いたことがない。もっと髪の毛を哲学してもいいような気がしてきた。
そういえばマイナスの進化で思い出したが、不要な進化を遂げている生物もいるのだった。クジャクの雄の豪華絢爛な羽は完全に進化の失敗だ。まずでかい。そして目立つ。クジャクの雄は羽が重過ぎてうまく飛べないと聞いた事もある。目立つから人間に狩られまくってきた。明らかに失敗だ。しかし、クジャクの雄の羽は重要なメスへのアピール要素だという。男同士でかっこよさを競っていたら無駄な進化を遂げてしまったのだろうか。鹿の角とかも結構邪魔そうな気がする。あれもメスへのアピールだ。
そう考えるとセックスアピールのための進化は機能的にマイナスになってしまうということだろうか?そして人間の髪の毛も異性へのアピールのためのものだったのだろうか?サルは四足歩行だから目の前のメスのお尻に興奮すると聞いたことがある。お尻が大きく赤いメスがモテるようだ。人間は二足歩行になったから、お尻よりも目の前にあるおっぱいに興奮するそうだ。男は皆おおきいおっぱいが大好きだ。
だが、髪に欲情するとはあまり想像できない。確かに平安時代は髪が長くツヤのある女性がモテているイメージだし、今の時代も髪の毛マニアはいそうである。しかし、種が始まった原始のころはどうだっただろうか?そもそも原始人時代はみんな同じような髪型だろうし、何よりも伸びっぱなしで臭そうだ。シャンプーもない時代、つやもなく、伸びっぱなしで泥にまみれた髪の毛はばい菌もいっぱいいそうだ。とても欲情できるとは思えない。髪の毛=セックスアピール説は私の中では納得できない。
一体髪の毛はなぜ伸びるのか?髪の毛が伸びることは人間に何をもたらしたのか?髪を剃って出家するというのは、人間の何かを手放したという意味があるはずだ。髪の毛が伸びることで人間は一体何を手に入れたのだろうか。髪の毛の哲学を誰か教えてほしい。
唐澤頼充

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