都知事選を終えて。家入一真候補への失望と希望と

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東京都知事戦が終わった。
猪瀬知事でよかった私としては最初から最後まで興味の持てない選挙だった。その中でもネット界隈で話題になったのが、家入一真さんの出馬。しかし、結局9万票には届かず、泡沫候補からは抜け出せなかった。

インターネットなんてホント、ごく一部の人にしか届いていないということと、インターネットはものすごく広大だということを改めて認識した。
私は、家入さんについてはどちらかと言うとアナーキーな人だと思っていた。これまでの活動は個人的には、「政府や大人に頼らず、自分たちの居場所は自分たちで作っていくんだぜ」というものだったと受け取っている。
しかし、今回の都知事戦で、政治家になろうと決意した。
それは、きっとコミュニティや繋がりだけでは救えない現実に直面してしまったからだと思う。本人に聞いてないから予想でしかないが。
けれど、家入さんを取り巻くコミュニティでは9万人に届かない投票数が限界だった。政治家になるにはもっと多くの支持基盤を集めなきゃいけないということになる。
彼は自分たちのコミュニティ作りはしてきてはいたが、政治的な支持基盤作りはこれまでやってこなかった。結果がこれだ。改めて、政治の遠さを感じずにはいられなかった。
個人的には家入さんのコミュニティの代表として今回の得票数で終わったのであれば別に良かったのではないかと思う。
ただ問題だったのは、「ネットの代表」「若者の代表」的な立場で出馬してしまったことだ。
家入さんの「僕らの」は、今回間違いなくネットユーザー全体を指すものと捉えられてしまった。
これは大きな問題だ。
実際のところ家入さんはネット上にアンチも多い。フォロワーだって特別多いわけではない。所詮10万フォロワーに届かない程度の認知度だ。
確かにフォロワーにとってはカリスマかもしれないが、それ以外の人にとっては元々ただの泡沫候補に過ぎないはずだった。
それなのに、周りの期待と、家入陣営の発言によってネット代表、若者代表に祭り上げられてしまった。
家入さんがネット代表、若者代表と見なされ選挙に望んだ以上、今回の結果は完全な敗北と言っていいと思う。
しかも、悪影響しか残さないほどの敗北だ。
フォロワーは満足したかもしれない。しかし、ネットと若者には、また届かなかったという失意しか残らなかったからだ。
最後まではっきりとしなかった「ぼくら」。しかし、きっとあったであろう家入支持層。わたしは、その「ぼくら」を明確にし、「ぼくら」のための選挙戦を戦って欲しかった。
ネットや若者の代表などと大風呂敷を広げるべきではなかったと思う。
事実、若いネットユーザーの代表的な候補となったのが、結果的に田母神氏だったのも見逃せない。家入さんはまったく若者代表になっていなかったと、結果から見て取れる。
確かに、家入さんを取り巻くコミュニティだけを代表するのであれば、今回のような出馬で良かったと思う。きっと家入陣営の中で、手ごたえはあっただろうし、次こそはという気概も生まれたと思う。
しかし、風呂敷を広げすぎたがために、家入さんに関わりのなかった若者やネットユーザーには、「力がない」という風評被害だけが残る結果となってしまったのではないか。
自分たちのコミュニティを背負ってか、それともネットユーザー全体を背負ってか、この違いは本当に大きい。
ネットを背負って出馬するのであれば、本気で勝つ準備をするべきだった。
選挙で勝つ準備とは、選挙期間中だけでなく、その前から根回し、支持基盤作りをすることなど本気だったらやらなくてはいけないことはたくさんあった。
最初から前者の出馬であったら、僕は家入氏を手放しで賞賛したと思う。しかし、努力不足の後者であり、かつ結果が伴わなかったから失望している。
しかし、希望が残らなかったわけではない。
家入陣営は、政治団体「インターネッ党」を設立し、続く区長選へ候補者擁立することを決めた。家入さんの取り組みが、一時の祭りではなく、本当の政治活動をしようという動きにつながったことだ。
彼の言う「ぼくら」が誰を指すのかはわからない。だが、「ぼくら」のための政治活動を継続的に行なっていくことを決めたのは本当に素晴らしいことだと思う。「ぼくら」が「誰か」を明確にし、その「誰か」が受益者となるために政治活動を行なうというのは、清廉潔白でわかりやすい。ぜひ早い段階で「誰か」を明確にして欲しいと思う。
「誰か」さえ明確になれば、その後の政治活動の戦略も立てやすい。それは政党活動に限らず、この層の受益のためならNPOでもいいじゃない?という道も見えてくると思う。
繰り返しになるが家入さんはこれまで、自ら居場所を作り続けてきた人だと思う。そして、きっと自ら居場所を作ることができない本当の社会的弱者に出会ってしまったのではないか。だからもう、そいつらを救うには政治しか手段がないと判断したんだと思う。その意思は本当に素晴らしいし、実際行動まで移した成果も大きい。
だから、選挙戦以外にも戦う道を見つけ、継続して政治活動を続けて欲しい。
確かに、家入敗北で若者やネットの力のなさへの偏見、社会的評価ができてしまったダメージはある。しかし、「ぼくらが誰か」を明確にして、その人たちのためにどこまで戦えるのかチャレンジを続けることで、きっと次のステージも見えるのではないか、と期待したい。
唐澤頼充

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