「レイヤー化する世界」佐々木俊尚著を読みました

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ジャーナリストの佐々木俊尚さんが執筆した「レイヤー化する世界」を読み終わった。
世界のシステムが変わりつつあるということを説いた本だが、本当に楽しい内容だった。本書はこれまで、世界のシステムがどのように変わってきたか、そしてこれからどうなるかを丁寧に書いている。
中東や中国が世界の中心であり、ヨーロッパは世界の辺境であったという話から、産業革命、第二次産業革命、そして情報革命のその先を予想する流れになっているが、何よりスケールが大きい。モンゴル帝国やペルシア帝国などが出てくることなどぞくぞくしてしまう。ビジネス書や情報化社会を説いた本はどちらかというと現代との違いに触れる程度の内容が多い中、人類の大きな歴史の流れを取り扱う内容のものは少ないのではないだろうか?
本書がいうこれからの社会は、国やグローバル企業というものを超え、Facebookやアップル、amazonなどをはじめとした超世界企業が「場」を作り、その場の上で個人個人が生きていくと言うもの。これまでの国や会社といったウチとソトを作り出してきた概念がなくなっていくことを繰り返し伝えている。過去の世界のシステムが多く語られるのは、自分の実感のなかった社会システムを繰り返しイメージさせることで、これからの社会システムが今までとまったく違うものになるというイメージを持ちやすくするような訓練のためだったと思う。
私は大学生後半から社会人になってしばらくビジネス書ばかりを読んでいた時期があった。しかし、そこで気付いたのは「ビジネス書=経営学で語られていることは、現在の社会システムの中で最適化するための方策だ」ということ。しかし、ネットの登場や世界経済の行き詰まりによって、現行の社会システムがいつまで存続するか分からない、そんな直感を持ったときにビジネス書から離れるようになった。
その後読み始めたのは経済学や社会学系の本。つまり本書のように社会の変化そのものを扱った本だ。そして、その後はそもそも社会を構成する人間とはなんぞやと哲学書等に興味が出てきている。そんな私にとって、本書は未来の社会を考えるにおいて非常に示唆に富んだものとなった。そして歴史の大切さを改めて知るきっかけともなった。

最近は新しい働き方についての話が各所でされている。ワークシフトやナリワイ、ノマドワーキングといったものだ。これらが次々と語られる中で、個人的に不足していたと思うのが、本書にあるような「これから社会システムがどう変わっていくか」という大前提ではないか。個別具体例ではなく、社会を、そして世界を大枠で見たときの視点が欠けているように感じていた。その点を補ってくれるのが本書だと思う。
もちろん本書に書かれていることが将来100%そっくりそのまま起こるわけではない。しかし、歴史の流れをつかみ、その延長線上に未来の姿を予想するというプロセスはとてもよい思考実験になると思う。今年読んだ本の中でもかなりお勧めに部類される良書なので、ぜひ多くの方に読んでいただきたい。


ライター 唐澤頼充

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