11月30日(土)に新潟ソーシャルメディアクラブの第14回イベントが開催された。通称NSMCは、新潟のソーシャルメディアユーザーが集う人気のコミュニティ。今回はジャーナリストの津田大介さん、ブロガーのコグレマサトさんという全国的にも有名なゲストを招待。
そこに地元新潟で活躍する、新潟美少女図鑑を発行する㈱テクスファームから加藤雅一さん、農家向け圃場管理システム「アグリノート」を開発・運営するウォーターセル㈱から中川幸哉さん、食に関わる企画やイベントで有名なフードユニット「DAIDOCO」から山倉あゆみさんを加え、“ソーシャルメディアと地域”についてディスカッションが行なわれた。会場の新潟国際情報大学新潟中央キャンパスには50名を越える参加者。この集客力がNSMCのすごいところ。
イベントの構成は下記の通り。
第一部「ソーシャルメディアの今、新潟の今」
講演:津田大介(ジャーナリスト、新潟日報特別編集委員)
第二部 パネルディスカッション 「伝わるメディアの作り方」
パネリスト:加藤雅一(テクスファーム)、コグレマサト(「[N]ネタフル」ブロガー)
モデレータ:一戸信哉(NSMC、敬和学園大学、新潟日報ソーシャル編集委員)
コメント:津田大介(ジャーナリスト、新潟日報特別編集委員)
第三部「新潟の『切り口』」
パネリスト:中川幸哉(ウォーターセル、アグリノート)、山倉あゆみ(DAIDOCO)
モデレータ:一戸信哉(NSMC、敬和学園大学、新潟日報ソーシャル編集委員)
コメント:津田大介(ジャーナリスト、新潟日報特別編集委員)
第一部は、twitterの活用を機に一気に有名になったジャーナリストの津田大介さんの講演。「ソーシャルメディアとは?」にはじまり、ソーシャルメディアが社会にどのような影響を与えているか、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説してくれた。津田さんのお話は、WEB動画等でたくさん見ているが、いつも分かりやすく、具体例が多くイメージがわきやすいのが特徴。さらにちょくちょく毒を吐いたりネタを突っ込んできたりと笑いも。この話の上手さはいつも惚れ惚れしてしまう。
特に印象に残ったのは、既存メディアとネットの影響力の差。テレビは視聴率1%で100万人が見ていることになる。一方ブログの1日のアクセス数のギネス記録は23万人。実はこれ、タレントの上地雄輔さんのブログとのこと。
これだけ見ると、テレビの影響力とネットの影響力の差は大きいように感じる。しかし、最近は “ネットで話題になったこと”がテレビに取り上げられる数が増えてきたそう。ネットの力でテレビを動かすことができる可能性が増してきたことは地方のソーシャルメディアユーザーにとっては心強かった。
実際に、官邸前デモやネット選挙解禁、福島観光地化計画などにおいて、どのような流れでネットが使われ、マスメディアの話題となり、ムーブメントとなっていったか工程を分解して説明してもらったのは貴重だった。多メディア時代の今、単独メディアで勝負してもムーブメントはできない。多くのメディアで話題になることが必要だということが良く分かった。
flickr/yutacarさんより |
第二部は「伝わるメディアの作り方」と題して、前述のコグレマサトさんと加藤雅一さんが壇上に上がり、一戸さんがモデレータ、コメンテーターとして津田さんを加えてパネルディスカッションが行なわれた。ネタフルというブログメディアと、美少女図鑑という紙メディアの立ち上げから市場に拡がっていった様子がエピソードを交えながら話された。ウェブと紙と言うメディアの違い、全国のネットユーザーか地元の女の子かというターゲットの違いなどで、それぞれ違う戦略をとってきたことなどとても参考になった。
第三部は「新潟の『切り口』」として、メディア事業ではなく、実際にビジネスを行なっている中川さんと山倉さん。引き続き一戸さん、津田さんとでのパネルディスカッション。実際にどのようにビジネスを設計していったのか、ビジネスの切り口がありありと見えた。メディア活用というテーマからは若干逸れた感はあったものの、2人の事業の“周りを巻き込む”ことの上手さは、ソーシャルメディア活用に通じていたのではないだろうか。
flickr/yutacarさんより |
イベント全体を通じて、個人的にはまだまだ新潟はソーシャルメディアを使いきれていないと感じた。確かにソーシャルで盛り上がったことが地元新聞や、テレビに取り上げられることは増えてきた。しかし、全国や世界にはまだまだ広がっていない。もっと大きなムーブメントを起こすためには、県外のソーシャルユーザーをもっともっと取り込んでいくことが大切。私ももっと視野を広げて工夫して取り組んで生きたいと思う。
ところで、NSMCの参加者はお酒好きな人も多く、懇親会がとても盛り上がる。今回は、一次会で「みやこわすれ」さん、二次会は「63(ロックサン)」で大いに酒を飲み交流を深めた。会の名前の通りソーシャルやネットが好きな人が多いので話題は弾むし、その後のつながりも生まれやすい。いろいろなバックボーンの方がNSMCというキーワードの元集い、別業種の視点でいろいろと話を聞くことができる。このようなコミュニティはとても大切だと思う。
NSMCのすごいと思うところに「毎回、新しい層が参加してくる」ことがある。地方のコミュニティ活動は、回を重ねるごとにどうしても同じ人が集まってしまい、飽きが来て、いつのまにか活動自体がなくなってしまうということが多い。
「NSMCは人の入れ代わりがあって、活気がずっと保たれていますね」
と、飲み会の席で一戸先生に聞いたところ
「そのために、ちゃんと工夫しているんだよ」
と回答をいただいた。その秘訣を聞けなかったのが残念だった。良いコミュニティの運営方法を今度はしっかりと聞いてみたい。
flickr/yutacarさんより |
ライター 唐澤頼充