クラウドファンディングは地方を救うか? @新潟インタビュー雑誌「LIFE-mag.」が60万円の資金調達に成功

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少し前の話になるが、新潟インタビュー雑誌「LIFE-mag.」を発行する小林弘樹さんが、クラウドファンディングで60万円を越える資金調達に成功した。新潟という土地でも数十万円の資金調達がネットで可能なのかと驚きを覚えた。

そもそもクラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人から資金提供を受けるという仕組みのこと。ソーシャルファンディングとも呼ばれ、国内では「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」http://camp-fire.jp/や「READYFOR?(レディーフォー)」https://readyfor.jp/といったサービスが大手として挙げられる。これまでの資金調達は金融機関やファンドなど、特定の相手からまるごと融資を受けていたのに対し、クラウドファンディングは不特定多数から小額の寄付を集める点が特徴だ。数十万円程度集めるプロジェクトが多いようだが、日本でも「歴史的な19世紀のレンズを現代のアナログ&デジタルカメラ用レンズとして蘇らせる」というプロジェクトでは1,000万円を越える資金調達に成功している。
LIFE-mag.」は上記大手のサービスではなく「FAAVO(ファーボ)」と言うサービスを利用した。「FAAVO」は地域応援クラウドファンディングと称し、新潟をはじめ宮崎や埼玉、熊本などそれぞれの地域にフォーカスした作りになっている。特定の地域で行なわれる“地域を盛り上げるプロジェクト”に対して、地元民や全国の同郷の人たちが支援するといったスタイルが特徴。ただし、後発のサービスであるからか資金調達力は大手と比べると劣るのが現状だ。
LIFE-mag.」は自費出版雑誌で、編集人の小林弘樹さんが一人で取材・編集・デザイン・広告営業・書店営業を行なっている全国でも稀な雑誌。(http://www.life-mag.com/index.html)これまでは新潟県内の人へのインタビューで雑誌作りを行なってきた。今回クラウドファンディングに取り組んだのは、新潟を出て、秋田、山形、新潟、富山、石川の5地域にインタビュー対象を広げて取り組むチャレンジ。ちなみに、クラウドファンディングは、募集時に目標金額と期限を決め、期限内に目標金額に到達しなければ1円も支援金が支払われない仕組みとなっている。募集終了日の時点で20万円ほど目標金額を下回っていたが、脅威の末脚でプロジェクト成立。最終的には62名から総額622,000円の支援を集めた。
目標金額を達成するまでの状況は、小林さんの必死の広報はもちろんのこと、小林さんの活動に賛同する多くの人たちが情報をシェアし、支援を呼びかけた。多くの人を巻き込んで、皆で支援を集める。もちろん、小林さんの努力や魅力が一番の核となっているのだが、それを周辺で支えるファンも一緒になって汗をかいた素晴らしい資金調達の姿だったように感じた。

小林さんと何度かお話をしている中で、「クラウドファンディングは宣伝のひとつ。発売前にいろいろな人に知ってもらえる機会になる」と話されていた。しかし、60万円の資金調達となると広告宣伝以上に資金繰りを助けてくれる材料になったのではないだろうか。雑誌で売上を上げていこうとなると、取材はもちろん、デザインや印刷費を事前に支払うことになる。その後、雑誌が売れて書店から集金をしてはじめて現金が手元に入ってくる。資金繰りという面では、なかなかに苦しい商売だ。数十万円の現金が先に得られると言うのは運営面では大きなメリットとなっただろう。小林さんとlife-mag.にはこれまで積み重ねた知名度や実績があるが、新潟と言う地方で数十万の資金調達に成功したと言う事例は、これから地方で何かをしたい人にとっては勇気付けられる結果になったと思う。
一方で、今回のLife-Mag.と小林さんの挑戦では個人的に少し残念に思うことがあった。それは、支援者の大半が新潟県内の方だった(と思われる)ことだ。FAAVOの仕組みに、“こんな所から支援が集まっています”と日本地図に支援者の所在地をマッピングするものがある。そちらを確認すると新潟県と神奈川県しかマッピングされていないことがわかる。FAVVOというサービスの狙いである「全国の同郷の人」にはリーチがかからなかったということだ。
もちろん、その地域だけで個人が数十万円を集められると証明されたことは本当に素晴らしいことだと思う。地方で面白いことをしたい個人が、活動しやすくなると言う面では地方を救うひとつとなるだろう。しかし、東京を始めとした全国からお金を集めることができれば、これは大きなツールとなる。
今回、全国から支援が集まらなかった(と思われる)のは、小林さんの問題と言うよりは、FAVVOというプラットフォームの問題だと思う。FAVVOの認知度や届くリーチが限られていたのだろう。個人的には、次回はぜひ大手の「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」もしくは「READYFOR?(レディーフォー)」でのクラウドファンディングにチャレンジしてもらいたい。東京の人や全国の人に、地方のプロジェクトは面白がってもらえるのか?支援してもらえるのか?はたまた自分の生活圏以外のことはウケないのか?がわかる有意義な実験になると思う。
もし東京の人に地方プロジェクトが面白がってもらえ、資金が集まるのならば、クラウドファンディングは本当に地方を救うツールになるのかもしれない。今後も地方とクラウドファンディングの動向についてはウォッチしていきたい。

LIFE-mag.編集室前で小林さんと

ライター 唐澤頼充

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