10月4日に新潟市西区内野、内野駅の目の前の本屋「ツルハシブックス」さんの2F、カフェ「イロハニ堂」で、グリーンドリンクス新潟内野の特別版が開催された。
通常開催も合わせ、3回目の開催となるグリーンドリンクス新潟内野。今回はゲストに、まちライブラリー提唱者の磯井純充さんが来られるということで参加させていただいた。
まちライブラリーとは、メッセージ付の本を、カフェやオフィス等の一角に本棚を設置し、町中で交換し合うという活動だ。特に大阪府立大学が2013年4月に開設したまちライブラリー@大阪府立大学は、活動のハブになる施設としてさまざまなメディアや関係者から注目を集めている。
現在、その活動は全国へ広がりを見せ、40ヵ所以上が存在しているそう。
全国のまちライブラリー一覧はこちらから:http://opu.is-library.jp/mlopu/where/
イベントは前半にツルハシブックスの西田卓司氏が司会をつとめ、ゲストの磯井氏と、郷慎久朗氏の3人でトークセッションを行い、後半にグループトークを行うという流れで実施された。
トークセッションで興味深かったのは、やはり磯井氏のまちライブラリーの話。まちライブラリーは単純に本をメッセージ付で共有するという活動ではなく、コミュニティとしての性格が強い。まちライブラリー@大阪府立大学や同じく大阪にある「ISまちライブラリー」のウェブサイトを見ていただければわかると思うがさまざまなイベントが開催されている。このような本そして趣味を通じた人と人とのつながりが生まれ、家族や地域を超えたコミュニティが形成されるのが最大の特徴だ。
「血縁や地縁から好縁社会へ」という言葉は各所で聞かれるようになってきている。これまでのコミュニティは血縁や、「そこに住んでいる」という地縁が重要であったが、好縁とは「同じものが好き」なもの同士がコミュニティを形成するといった考え方だ。地域コミュニティが崩壊しつつある今、コミュニティの再編成ということで、「好縁」の役割に注目が集まっている。具体例としてはプロスポーツクラブのファン、新潟で言えばアルビレックス新潟のサポーターたちのコミュニティを想像して欲しい。
「地域をもっと楽しく、活発にしていくためには、行政の街づくりや、企業の商業開発などに頼るのではなく、そこに住む人たちひとりひとりが、自分の所属する「好縁」でできたコミュニティを探すことが大切ではないか?」というのが磯井氏の意見だと思う。磯井氏はそれを「問題は蛸壺ではなく、蛸だった」と表現していた。
街を変えていくのは私たち自身なのだというメッセージに私も深く共感した。
トークショーではまちライブラリーでの活動の様子や苦労話など多くを聞くことができた。その中でも私が特に注目したのは「コミュニティをお金儲けの場にしていない」点だ。
前述のとおり、新しいコミュニティ作りに大きな注目が集まっている。コミュニティを求めている人、作りたい人が私を含め周りに沢山でてきているという実感がある。会社など辞めてコミュニティの中で生きて生きたいという人も少なくない。
しかし、磯井氏の話の中ではコミュニティ運営をして収益を上げるという話はまったく出てこなかった。それどころか、磯井氏はまちライブラリーを広めていると同時に「一般財団法人 森記念財団」のサラリーマン。つまり、収益とコミュニティづくりは完全に別活動なのだ。
これは、私にとっては衝撃であったし、コミュニティ “ビジネス”を目指す人にとってひとつの警告になったのではないかと感じた。
これまでの地域コミュニティが経済原理に縛られずボランティアだったように、好縁コミュニティにもビジネスの色はあまり入らないのだなという予感がする。
それはともかく、グループトークで幸運にも磯井氏と同じ組になることができた。コミュニティに対する考え方について、同意できる部分が多く、また多くの経験談に感銘を受けた。新しいコミュニティ作りが各所で行われる中、ひとつの成功事例として「まちライブラリー」に今後とも注目したいと思う。
ライター 唐澤 頼充