相も変わらず、労働市場には良いニュースを聞かない。
失業者の数はもちろんだが、これから社会に羽ばたこうと言う新卒者の就職難は非常に厳しいものがある。
努力して大学に入り、いざ社会に!と思ったら社会が受け入れてくれない。
これは非常に深刻な事態だと思う。
しかし企業側の視点で見れば、国内はもちろん世界的に不況であり、人を雇う余裕がない。人件費は最も大きな経費であり、即戦力と考えられない新卒者を大量採用していたのでは会社が潰れてしまうので、当然の判断と言える。
■就職難の原因は何か?
就職難の現在各方面で原因が挙げられているが、整理すると以下の3点が中心であるように感じられる。
1.新卒一括採用主義が悪である。
2.学生の質が低下している。
3.政治が悪い。
これらは一見どれも的を得ているようであるが、根本的な原因ではないように思う。
新卒一括採用は企業の人材教育を効率よく、しかも質を高く行えると言う意味では良い仕組みではある。
学生の質については、好景気時と比べて単純に求められるレベルが上がっているだけで、学生の質が低下しているわけではない。
政治については、就職率を上げる直接的な政策など考えようがないので、政府が何かしてくれると思うのが間違いである。
根本的な原因はやはり経済が停滞していることである。
経済と聞くと、経済停滞の原因を政府に押し付けがちではあるがそれは酷である。そもそも、日本の主要産業である製造業のビジネスモデル自体が、人件費の安い発展途上国に勝てないモデルなわけで、資源のない我が国では製造産業での負けはいつか必ず来る事だ。だからといって、新たな産業を確立するのは政府の役割ではない。
■敷かれたレールは未来に繋がっているか?
そのような中、学生の選択肢はほぼ「就職」。しかも、勝ち組と呼ばれる学生は大手企業や公務員、銀行員である。
雇われることを悪いとは言わないが、既存の、しかも成熟産業の中に飛び込んで行った先に道はあるのか?真剣に考えて欲しい。
そもそも大企業の一括採用は、成長期に確立したシステムである。成長期には敷かれたレールはどこまでも続いていたが、成熟期の現在それは当てはまらない。敷かれたレールの先は行き止まりで、また別の方向に進まなければならないかもしれない。
それを認識して、それでも既存のレールの上を歩くかどうかの判断が必要だと思う。
■生存競争を生き残るには
自然界では、動物は子世代が育ってきたら親世代は死ぬ。なぜかと言うと、親世代と子世代が同じ環境で生存競争をしたら、子世代は勝てないからである。種の存続を考えた場合、親世代は早々におさらばするのが理にかなっているのである。
一方人間は、親世代と子世代どころか孫世代までもが同じ環境で生存競争をしている。これは、人間が社会性を持っているからであり、様々な環境に対応できるからだと言われている。
人間の生存競争はビジネスである。
しかし、現在は親世代から孫世代までが同じ土俵で生存競争を繰り広げているように思える。
子世代は、同じ土俵で親世代に勝てない。それを認めるべきだ。
労働論争の一つとして、団塊世代vs若者世代が語られることを目にするが、そもそも同じフィールドでは若者世代は経験も人脈も知識も、さらには金もある世代には勝てないことに気づかなくてはいけない。
では、生存競争で若者が勝つためにはどうすれば良いのか?
それは、違うフィールドに立てば良いのである。
■既存のルールで戦うな、新しいルールを作れ
年上世代と違うフィールドで戦い、勝った良い例にソフトバンクの孫正義氏が挙げられる。彼は、コンピューターという、それまでなかったフィールドで勝負を挑み、今では日本を代表するグループ会社のトップに立っている。
それでも、孫正義氏は既存のルール、つまり組織であったり、会社であったり、株式であったり、通信であったりといった分野にも勝負を挑んだ。その勝負に勝ってきたのはたぐいまれな才能と努力のなせることだと思う。それを万人に行えと言っても無理であろう。
今、経済も、企業も、社会も、政治も大きな転換期を迎えている。
既存のルールでこの国が、いや世界が豊かで幸せなものになるとは思えない。
この大きな転換期に置いて、新しい社会のルール、ビジネスのルール、政治のルールを作るのは若者で会って欲しいし、そうでなくてはならない。
既存の価値観をそのまま受け入れてしまえば、今の若者は、次の世代に旧時代の生き残りと言われてしまう可能性もある。
消費も金融も、働き方も、子育ても、政治も、そもそもお金そのものの価値も変わってくるかもしれない。
就職難はいわば、今のルールがうまく機能していない証拠である。
新しいルールを作る。
若い世代の多くの人は、そんな転換期に生きていることを肝に銘じてほしい。
そしてその新しい時代を切り開くステージにいられることに幸せを感じてほしい。
からさわ