J1第9節のアルビレックス新潟対、ヴィッセル神戸の試合をテレビ観戦しました。
東日本大震災の影響で延期され、リーグ戦は4試合目。
アルビは1勝2分、ここ2試合は先制するも追いつかれてドロー。相性の良い神戸に対して、ホームで勝ち星が欲しいところ。
アルビのシステムは4-4-2。メンバーは、GK東口、DFは右から藤田、鈴木、千葉、酒井。MFは右から今季初先発の小暮、三門、本間、チョ。FWはブルーノ・ロペス、ミシェウの2トップ。
■ブルーノ・ロペスの今季3点目でアルビが勝利!
連戦にも関わらず、前半から両チームとも非常にコンパクトな陣形を保ち、攻守に渡って締まった展開となる。
両チームとも決定機を作るがなかなかゴールを決められない。激しい試合展開が続く中、74分に右サイドの藤田のスローインからチョ・ヨンチョルがペナルティエリア内で受けたボールをヒールキックでダイレクトにさばき、落としたボールを今シーズンからアルビに加入したブルーノ・ロペスがボレーシュートで叩き込みアルビが先制する。
その後、両チームとも決定機を作るが決め切れず、アルビが1-0で勝利。ブルーノ・ロペスの今季3点目でアルビが2勝2分けの勝ち点8とした。
■ボールの収まらない落ち着かないゲーム
アルビ、神戸共に、中盤をコンパクトに保ち、最後まで運動量が落ちることなく攻守の入れ替わりの激しいナイスゲームを演じた。共に組織的なプレッシャーが効いており、隙のない展開であったが、攻撃は一本調子で変化に乏しかった。
神戸はアルビのFWミシェウやMF本間にうまくプレッシャーをかけ、ゲームを作らせなかった。一方で神戸もMFに入った大久保がアクセントとなろうとしていたがうまくボールが集まらず、変化を付けられなかった。両チームとも試合をコントロールできる選手がいなかったことで、全体的に落ち着かないゲームになってしまった。
上位チームになるとリズムをつかめない時間帯でも、ゲームをコントロールする選手がボールを落ちつけて主導権を渡さず、相手の勢いをそぐことができる。しかし、戦力的にも中位のアルビと神戸は、ゲームコントロールができず、リズムの良い時、悪い時の差がはっきりと出てしまうのは課題と言える。
■2011年アルビの戦力は?①
アルビは今シーズン、昨シーズンからレギュラーではDF永田、西、MFマルシオ・リシャルデスが抜けた。CBは一昨年の千代反田に引き続き、永田が移籍したことで、2年でCBコンビが総入れ替えとなる異例の事態となった。また、4シーズン在籍したMFマルシオ・リシャルデスは、まさに新潟のキングと呼べる選手であり、アンタッチャブルな存在であったが、とうとうアルビを離れることになった。見方によっては飛車角落ちともいえる状況の中、黒崎監督がどのようなチームづくりを行ってきたのか、実際目にするのは今回が初めてで楽しみであった。
守備陣は右サイドバックに札幌から移籍してきた藤田が収まり、センターバックは同じく札幌から移籍の石川、89-90年組みの鈴木が起用されている。今日の試合は大きな破綻はなかったが、局面での連携や対応などまだまだ若さが見えそうではある。しかし、チーム全体でプレスが効いていることで大きな戦力ダウンになっていない。
一方攻撃陣は、マルシオ・リシャルデスの抜けた右MFには三門、今日は小暮が入り、FWにはブルーノ・ロペスが起用されている。ブルーノ・ロペスはアルビが待ち望んだエジミウソン以来の本格派ストライカーといった印象で、日本に馴染んでこればもっと活躍が期待できそうである。しかし、マルシオの穴は埋めきれていないようであった。
■2011年アルビの戦力は?②
攻撃面では、マルシオの穴が大きい一方で、期待できる面も見つかった。昨シーズンからブレイクしていた左MFのチョ・ヨンチョルが今年もさらにスケールアップしそうな期待を抱かせてくれた。また、今シーズン途中出場のチャンスを与えられている89-90年組のFW川又も、戦力として期待できそうになってきた。シーズン途中で川又がスタメンを取れるほどレベルアップしてこれば、ミシェウをMFで使うことができマルシオの穴はふさがりそうでは?と感じた。鈴木、小暮、川又といった89-90年組と言えば、アルビが初めて高卒選手を大量獲得したシーズンのメンバーであり、彼らが育ってきたのはどこか感慨深いものを感じる。
2011年は力を付けるシーズンと位置付けることができれば、今のメンバーを維持できた場合、来シーズンはかなり好成績を期待できる素材はそろっていると感じた。しかし、ここ数年はレギュラーが毎年引き抜かれているが・・・
■継続と組織力と人材【アルビスタイル】
ここ数年、レギュラークラスの移籍が絶えないアルビであるが、しぶとくJ1の舞台に喰らいついている。今日の試合を見て、改めてアルビの戦術の継続性のたまものであることを感じた。始まりは2004年の鈴木淳監督就任からであるが、4-4-2をベースとし、プレッシングとサイドバックの攻撃参加がベースの戦術は2011年にも繋がっている。
サッカークラブは監督が変わるたびにスタイルが変わることの方が多いし、同じ監督であっても成績によってチームのスタイルを変えることも少なくない。そんな中、成績の上下に関わらず、同じやり方を貫き通してきた、鈴木監督(現大宮)、黒崎監督には頭が下がる思いである。
アルビの経営規模を考えると有力選手を長期間契約することや、新たに獲得し続けることは難しい。そんな中、戦術を継続し続けたことで、他のクラブにはない組織力をクラブとして身につけて来た。その結果、どんな人材が来ても、ベースは同じであり、人材に左右されない共通認識を植え付けることに成功している。これが毎年主力を奪われても戦えているアルビの強さ、アルビスタイルである。
組織をつくるとき気を付けるべき点は、「誰かが抜けたら働かなくなる組織作り」になってしまわない点である。これはサッカーだけでなくどのような組織にも当てはまる。人材によってパフォーマンスは上下するけれど、組織として機能する機能美、組織力が今のアルビを支えているのだと感じた。
からさわ