お金について考えてみた。
お金の役割は、「価値尺度」、「流通手段」、「価値貯蔵」の3つ。
このうち価値尺度は言い換えれば価値の単位。ダイコン1本とカニ一杯の価値を比較する際にそれぞれの価値を数値化し、最後に「円」とつければ比較できる。ダイコン150円、カニ4000円なら、カニの価値はダイコンの約26本分とわかる。じゃあエビは?牛は?とそれぞれの価値を図る尺度になるのがお金だ。物々交換は大変だけど、お金に換算すれば一発OK!という感じ。
「流通手段」は軽くて持ち運びに便利ということ。金銀やダイヤは重いしかさばる。物は言わずもがな。しかし、お金は軽い。しかも、今はお金はただの数値のやりとりでしかないため、クレジットカードや電子マネー、ATMの振込でも現金を持ち歩かなくても取引できるなど、超流通しやすいのだ。便利~
最後の「価値貯蔵」はいつまでも使えるということ。魚は日が経つと腐って価値がなくなるが、お金は価値を貯めておくことが出来る。だから先に頑張ってお金を稼げば、後で働かなくても何かを買うことができる。お米よりもずっと貯めておける。ダイコンを10本売って得た1500円は、いつでも好きな時に1500円分の価値交換を行使できる権利を得たことになる。
で、個人的にこの「価値貯蔵」は結構厄介だと思う。
というかこれがお金の魔力の源だと思うからだ。貯めておける=いざという時=保険。いつか◯◯な時に備えて。そういう心理を生むし、それは当たり前だ。不安の解消や危険からの回避は生き物の本能だもの。
しかし、恐怖からくる出し渋り=貯蓄が、投資や消費を控えさせ経済を不況にする現況になっている。
とは言え「不況になるから皆使え!!!」では、みんな絶対に使わない。
というか、皆がお金をじゃんじゃん使っている時に、こっそりと少しずつでも価値貯蔵を増やしていくと、そいつが一人だけ周りを出し抜いて将来楽ができるようになる。アリとキリギリスのアリが得するのが資本主義だというのは自明で、キリギリスは冬(=トラブル)があるとそれを乗り越えられない。
お金は社会の血液で、入ってきた分全部使ってしまうのが本当はいいはずなんだけど、皆が「いつか◯◯の時に」と思って、貯めたがる。言ってしまえば、そうやって「ズルする奴が得する」のが今の社会で、そのシステムを創りだした根源がお金の持つ「価値貯蔵」の機能なのだ。
正直な所、一時的な頑張りで得た対価が、永久に価値が貯蔵されていくというのは原理的に考えておかしいように思う。運もあるし、時代性もある。遺産だってそうだし、たまたま金持ちの家に生まれただけで、勝手に価値を行使することができるのは、果たして正当な対価と言えるかは微妙だと思う。
では、その価値貯蔵に対応するためにこれまで何が行われてきたかというと、ゆるやかな「インフレ」を起こすこと。インフレとは物の値段が上がり続けることで、そうすると貯蔵した価値が目減りする。
つまり、「昔の10円」の価値は今と比べるとたいそう高かった、というのは聞いたことがある人が多いと思うがそういうことだ。かつて大金だった10円を貯蓄していても、将来10円では何も買えなくなるかもしれない。じゃあ早くに使っちゃおう。と心理を動かすのがインフレだ。
逆に今の時代問題視されている「デフレ」は、物の価値が下がること。これまで200万円で自動車を買えていたのが、10年後に物の価値が下がり50万円で買えるようになったとする。そうすると200万円をずっと貯金して使わなかった人は10年後に自動車を4台も買えるようになる。これじゃあヤバイ。日本の失われた20年と言われる期間は、このデフレが続いた期間でもある。アベノミクスで躍起になってインフレを目指しているのはそのせい。
前段の說明が面倒くさくなってきた……
言いたいのはこの「価値貯蔵」の機能をテクノロジーでいじることが可能ではないかと思ったのだ。
例えばお金を全て下記のように置き換えてみてはどうだろう?
(1)発行時間が記録された電子マネーに置き換える。
(2)電子マネーは時限的に一定の割合で目減りしていく。(100万円が1ヶ月毎に0.5%ずつ減っていく 等)
これで早く使わなきゃ損をするので消費が伸びる。
インフレの時は年収が伸びなければ生活が苦しくなる一方だ。アベノミクスの危険はここだと言われていて、物価が上がるのに給料が上がらないという最悪のパターン(スタグフレーション)が起こる可能性を指摘されている。しかし、この「減る電子マネー方式」だと、物の価値はそのままで、お金そのものが時間軸に比例して減っていくだけなので、給料は今のままでOKとなる。
そして、お金を貯金しているのは不利なので、より減り幅の少ない金融商品に投資をさせるように誘導する。
そんなふうになる気がするんだけどなー、という壮大な妄想。
例えばこの減る電子マネーは、ベーシック・インカムとして国が社会保証に使ってもいい。
ベーシック・インカムの話をすると、必ず「労働意欲が削がれる」と怒る人が居るのだけれど、ベーシック・インカムとして配られたお金は目減りしていく電子マネーに。一方、ちゃんと働いて得たお金は目減りしない「現金」とすればいい。
ベーシック・インカムは減る電子マネー。それが嫌なら働こうとすれば労働意欲も保たれるのでは?と思う。
東浩紀氏は、「ベーシック・インカムは電子マネーで配布し、使用データを全て政府がログを見れるようにすればいい。働いて得たお金は用途がわからず匿名性の有るお金にする。そうすると匿名の金を得るためにみな労働する」と言っていたが、さらに「減る」となれば結構インパクトが加わるはずだ。
ということで、古来より「価値貯蔵」という魔力を持ってきたお金。テクノロジーの力で、どうにかその魔力を軽減できないものだろうか?「お金がない世界を!」っていう人もいるけれどそれは無理だと思うので、現実的な解を探して行きたいです。
長々妄想を読んでくれてありがとうございました。