11月2日、3日と新潟市の各所で「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」通称「がたふぇす」の第4回目が開催される。
がたふぇすとは、アニメ・マンガの祭典として、新潟市文化政策課が主導となり開催されているイベント。新潟市の古町、万代、白山地区などを中心に、クリエーターや声優のトークショーやアニメ・マンガ作品展、コスプレ撮影会等が開催される。
にいがたアニメ・マンガフェスティバル:http://www.niigata-animemangafes.com/
にいがたアニメ・マンガフェスティバル:http://www.niigata-animemangafes.com/
新潟は、「ドカベン」の水島新司さん、「らんま1/2」の高橋留美子さんなど多くの有名漫画家を輩出した土地である。新潟市は「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」を掲げ、街づくりを進めている。私も数年前にこの都市構想の企画作りにリサーチャーとして関わったことがある。なつかしやなつかしや。
「マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」の一環として、今年2013年に古町に「新潟マンガの家」、万代に「マンガ・アニメ情報館」がオープンした。両施設については、設立においても、運営においても賛否両論渦巻いているが、新潟市が同構想を本気で進めているという目に見える成果となった。
新潟市マンガの家:http://house.nmam.jp/
新潟市マンガ・アニメ情報館:http://museum.nmam.jp/
さて、今回で4回目となった「がたふぇす」は、もともと個別に開催されていた「にいがたマンガ大賞」と「コスプレガタケットSpecial」が合併してできたイベントである。来場者数も毎年増加しており、2011年の1回目は2万3千人、その後は3万5千人、4万6千人、今回は5万人の動員を目指す「日本海側最大級」のマンガ・アニメの祭典となる。
イベントへの力の入れようは毎年強まっているようで、今回発表されたタイムスケジュール(記事先頭画像参照)を見ると、すべてカバーするのは物理的に難しいほどの企画が開催される。
ただし、マンガ・アニメというものは、その領域全体に興味があるというよりは、特定の作品やクリエーターに興味を持つため、分散多企画開催の方が多くの消費者の動員を見込めるという考えだろう。
それにしても、さまざまな企画を新潟市の各エリアで分散開催するのが面白い。
オタクカルチャーの総本山というべきイベントは東京ビックサイトで開催される「コミックマーケット」通称「コミケ」だろう。3日間で50万人を軽く上回る人が集まる世界最大規模の同人即売会だ。東京ビックサイトという大きな「箱」があるからこそ開催できるイベントと言っても差し支えない。
一方で、新潟には東京ビックサイトほどの施設もなければ、コミケほどの動員力があるイベントは開催できない。それでも多くの人に参加してもらうように、多くの人の目に触れるようにと特定の会場ではなく、都市そのものを会場と見立ててがたふぇすが開催される。
都市を会場(=ハード)に見立て、ソフトとしてイベントを開催する。こういった取り組みは今注目度が高まっているように思う。
例えば「シティマラソン」はその典型で、都市の道路がそのままコースに転用される。
また、長野県の渋温泉では、人気ゲームのモンスターハンターとタイアップし温泉街全体をゲーム会場とした。(http://www.capcom.co.jp/monsterhunter/news/collabo_60813.html)
これらに共通して言えるのは、都市あるいは街はただの「ハード」であり、集客の要因は「ソフト」である企画・イベントによるという点である。
「人を呼ぶためにはどうしたらいいのか?」という地域の課題に対して「地域の魅力を引き出す」という方法が多く語られる。「何が地域の魅力なんですか?どんなストーリーがありますか?観光名所はなんですか?」これらは街にある資源そのものがソフトであり、集客の肝となる。
しかし、全国津々浦々に京都のような観光資源があるわけではない。
そんな多くの都市や地域、街にとって、
「ハードの特徴は消す。そして、ソフトとしてイベントや企画を実行してくれる人が気持ちよく運営できるような環境を提供する」ことで、他地域との差別化はできないだろうか?
地域に、街に、はたまた自分のお店に「魅力的なコンテンツ」がないのであれば、コンテンツを提供してくれる人が使いやすいと思うような「箱、受け皿」としてハードの整備を進めるのもひとつの打開策なのではないかと思う。
そのような場合に必要なのは、「集客力」ではなく、イベントや企画の「誘致力」だ。必要な力がまったく違ってくるということは、地域が行うべき活動もまったく異なるはずだ。
新潟市はよく、「観光資源がない、観光客を連れて行くところがない、何にもない」と言われる都市だ。確かに、近隣の長野市の善光寺、金沢市の兼六園のような分かりやすい観光ランドマークが新潟市はない。
であれば、「魅力的なコンテンツ」を「外部から調達」することが、今後新潟が生き残っていく道かもしれない。
ハードとしての都市に新潟市はなれるのかどうか。
これを踏まえて、今週末に開催される「がたふぇすvol.4」は、都市をハードと見立てて、コンテンツを外から取り寄せて開催される大規模イベントの典型であるといえる。
今後の町興しや地域おこしの可能性を探るという視点からイベントをチェックしてみてはいかがだろうか?
ライター 唐澤 頼充